ここにある母子手帳の一歳の誕生日に、「おもちゃで遊ぶよりリモコンやクッション、値札、財布などが好きらしいゾ」と母さんの字で書いてある。値札と財布が好きってのもちょっと謎だけど、与えられたものでは満足しないという点は今も変わらんよね。
　高一の時「なんか違う」と悶々としてた君が、自ら選んだその場所で、今も相変わらず悶々としているなら、それはすっごく真っ当なことだと思うよ。よくわからないことを、わからないまま大切に温めておくことは、真面目にやっている証拠。答えをせっかちに憶測で補ったり、無理なこじつけをしたり、納得のいかないまま他人の意見を取り入れたりして結論を急げば、一応の答えは出るだろうけど、関心は薄らぎやがては忘れてしまう。でもそれは答えとは言えない。誰も答えを与えてはくれない。それが芸術の面白さだと思うよ。人生そのものとよく似ている気がする。
　自分が好きなもの、自分が興味あるもので、自分を溢れさせればいい。大丈夫、答えは向こうからやってきますから。